震える心へ

―自分が自分であり続けるために―より良く、より自分らしく生きるためのヒントになる話を考え付く限りの角度から話していきます。

根深い悪習を断つ必殺技「RAIN」について

こんばんは、YUKISHIBAです。今回はメンタルケアに関する心理テクニック「RAIN」についてお話しします。

私がRAINを知るきっかけになったある本よれば、
RAINは様々な依存症の治療に非常に有効な方法の一つで、実験の中ではSNSや恋愛からドラッグやアルコール、そして最も治療が難しいと言われる煙草依存に対しても完璧に近い治療効果を発揮したのだそうです。

また依存症とまでは行かなくても様々な悪習を根本から断ち切る方法としてRAINは知られています。
とはいえ聞きなれない方もいると思います。

私もかねてより数多くの悪習に悩まされてきた一人ですが、この本を読むまでは全く聞いたこともありませんでした。
そこで今回はこの「RAIN」についてお話ししていきます。

「RAIN」とは

最初にこの名前を見た時は「何だかかっこつけた名前でとっつきづらいなぁ」と感じましたが、
RAINという名前は
Recognize(認識する)、
Accept(受け入れる)、
Investigate(分析する)、
Non-identification (非同一化する)
の頭文字を取ったもので、これらはそのままRAINにおけるプロセスとなっています。


ここからはこの4つのプロセスについてそれぞれ説明します。

①Recognize(認識する)

何かに腹を立てた時、自傷行為に走りそうになった時、煙草を吸いたい衝動が湧きおこったとき、
最初に必要なのはその抑えようとすることではなく、その事実を認識することです。
ここで言う「認識」は、単に衝動のままに動く前に、
自分の中にその衝動が湧きおこっているという事実として捉えることです。

思いつめた表情の女性

当たり前なことを言っているようですがこれが意外と当たり前には出来ていません。


自傷行為を習慣的に行っていることに悩んでいる人を例にしましょう。
例えばこういう人か強いストレスを感じてから腕を掻きむしるまでの間に、
「あ、自分今自傷行為したい衝動に駆られてるな」と認識したりはしてるでしょうか。

恐らく殆どの人はそんな冷静さは持ち合わせていないでしょう。
そのぐらいストレス(きっかけ)→衝動→行動(自傷)という一連の流れは滑らかに行われ、
いちいち自覚することすらないほど自然に流れ、繰り返されるのです。


辞められない習慣に悩んでいる人の殆どは衝動を感じることにすら自覚的になれません。
そのため無意識のうちにストレス→行動という習慣にすっかり当てはめられているのです。

だからこそ意識的に、自分の中に湧きおこったものを事実として認識する必要があるのです。

②Accept(受け入れる)

悪習や依存症を治したいという思いが強ければ強い程、悪習や依存症それ自体、それらを抱える自分自身を悪者として捉えがちですが、これはかえって逆効果です。
何故ならこれをすることによって自信・自己肯定感を感じにくくなり、そのせいで本当に必要な行動が妨げられてしまいます。
それに衝動を感じるたびに脳内で敵と戦っていてはメンタルがいくつあっても足りません。

顔を押さえつけられる女性


代わりにRAINでは衝動を感じたら「まぁそう感じちゃうのはしょうがないよね!」とひとまず受け入れます。
自分自身や自分が感じているものを悪だと決めつけるのではなく、ひとまず許してあげるのです。


受け入れること自体に抵抗や恐怖感を覚える人もいるでしょう。
「しょうがないよね!なんて言ったら一生変われなくなってしまう!」といった具合に。

自分が何か問題(欠陥と言ってもいい)を抱えていて、それを何とかして変えたいと思っている。
でも今日も相変わらず自分はそれに囚われている。
今日も今日とて悪習に走ろうとしている。
その事実を許すのは勇気がいることです。


許すことに勇気がいるのは何故でしょうか。
許すこと=悪習を変えられなくてもいいと考えること
と思い込んでいるからではないでしょうか。

しかしこれは必ずしも正しいとは言えません。


RAINにおける「許す」という過程の意味するところは、
「悪習を変えられなくてもいいじゃん別に!」と匙を投げることではなく、
「自分は今のところ“まだ”悪習を克服できていない」と素直に認めることなのです。

悪習を治したいのに、治すどころか相変わらずその悪習に従った行動をしようとしている自分がいるという現状をひとまず事実として受け入れること、つまり
「現時点では“まだ”自分はこの悪習に囚われている」ことを認めることが、
「どうやったら自分はこの悪習から脱出できるのか」を考える第一歩になるのです。

③Investigate(検証する)

衝動に駆られていることを事実として認識し、まだ自分が悪習に囚われているという現状を受け入れてやっとこの段階に進むことが出来ます。

この過程では、自分が衝動に駆られた原因や悪習が出来上がった原因、
辞められない原因など様々な視点から自分の抱える悪習を分析し、
その全貌を明らかにしていきます。

洋書と虫メガネ

この過程での要点は主に以下のような点です。
1その行動をしたい衝動に駆られるきっかけ
2その行動をするとどう感じるか(どんな報酬を得られるか)
3そのきっかけがあると何故その行動をしたくなるのか

こういった角度で検証することで、自分がきっかけ(ストレスなど)→衝動→行動→報酬という習慣を繰り返しているときに感じることや事実についてマインドフルになる、つまり客観的な視点からよく理解できるようになります。

④Non-identification(非同一化する)

RAINの最終過程である非同一化は特に依存症の本質を突いていると思います。
何故なら依存症はその対象を悪いと知って尚それに囚われている状態であり、
何かに囚われている時、人はそれを自分の内部にあるものとして捉えるからです。


自分を傷つけたい衝動も煙草を吸いたい衝動も、全て持ち主である自分自身と区別することなく認識するのです。
しかしこの状態では自分の衝動、自分の抱える依存症の全体像をとらえることが出来ません。
自分の中にあるものは主観によるバイアスがかかってしまうからです。


鏡が無ければ自分の姿を見ることが出来ないのと同じで、
自分の抱えているものや置かれている状況を的確に知るにはそれらを自分の内側から、
自分の目の前に出現させる必要があります。

そして目の前に出現させるには、自分とその対象をはっきり別の存在として認識する必要があります。
これがRAINの最後の過程、非同一化です。

ノートに書く男性

非同一化の方法として代表的なものが、言葉にまとめることです。
特に頭の中でまとめるだけではなく、言葉にして紙に書くことで
それを頭の中から取り出し、情報を冷静に整理することが出来ます。


紙に書くという行為は書き手自身に大きな影響力を発揮しますが、
依存症治療、悪習からの脱出の過程でも大きな効果を発揮してくれます。

RAINは最強の依存症治療法?

RAINはマインドフルネスの領域にはありますが、
マインドフルネスと聞くと何となく非科学的なものという印象や、胡散臭さを感じるかもしれません。

日本ではまだマインドフルネスを医療と結びつける考えは(少なくとも一般人の間では)受け入れられていないように感じますが、
欧米ではマインドフルネスの医療における効果が認められつつあります。
これに類するものとして、日本ではまだ宗教的なものという見方の強い瞑想もまた、
欧米では脳科学の世界でその効果が認められているのです。


マインドフルネス・瞑想は最早ただの自己啓発的なものではなく、
効果があると科学的に認められているメソッドなのです。

丸い石

私にRAINを教えてくれた本の著者は、マインドフルネスを医療・脳科学の分野で応用する研究の第一人者です。

その本には著者が行ったRAINの臨床実験に関することも書かれていましたが、
それによればRAINは既存の依存症治療に比べて圧倒的な効果を発揮したというのです。


著者は自身が研究していたマインドフルネスの持つ治療効果を実証するため、
煙草依存症患者を対象にした臨床実験を行いました。
患者を二つのグループに分け、一方には既存の禁煙プログラムを、もう片方にはマインドフルネスを利用したプログラムを受けてもらいました。
既存の禁煙プログラムは認知行動療法と呼ばれるもので、現在も主流の依存症治療法です。
マインドフルネスを利用したプログラムには正式な瞑想とRAINを組み合わせた物でした。


著者はマインドフルネスを利用した禁煙プログラムで、
既存の禁煙プログラムと同程度の成果をあげられるだろうと期待していました。

しかし結果は同程度どころか、なんとマインドフルネスを利用したプログラムが
既存の禁煙プログラムの5倍もの治療効果を発揮する結果となったのです。


そしてそのプログラムの中でどの要素が最も結果に大きく影響したのか検証したところ、
RAINによる効果が最も大きく影響したと判明したのです。


つまり、RAINは依存症治療に対し、既存の治療法はおろか、瞑想をも上回る効果を発揮したのです。

既存の治療法には無いRAINの強み

上記の臨床実験で比較対象にもなり、依存症治療のプログラムにおいて現状最もポピュラーな方法が認知行動療法と呼ばれるものです。

認知行動療法の特徴は患者の意志の力によって依存症を克服することを目的としている点です。
依存による衝動を感じたらとにかく行動に走るのを我慢してやり過ごすというもので、
乱暴に言えば「気合いでやめさせる」治療法です。


これでも一定の治療効果が認められているから今もこうして禁煙プログラムなどに組み込まれているのでしょうが、
認知行動療法には致命的ともいえる問題点があります。

それが、治療終了後の再発率の高さです。

窓辺にたたずむ男性

認知行動療法では、衝動を感じるたびに意志の力によって行動に移すのを我慢します。
これを繰り返し、ある程度以上行動に移さなくなったと認められたらプログラムを終了しますが、
患者の戦いはプログラム終了後も続きます。

患者は治療プログラム終了後も繰り返し衝動に襲われ、その度に意志力をフル稼働させてそれに抗わなければいけないのです。


衝動を意志の力だけで抑えるには大きな心理的負荷がかかります。
これを延々日常生活で繰り返していれば意志力で抑えられる限界を迎え、
再びもとの依存状態に戻ってしまう人がいるのは自然なことです。

認知行動療法によって完全に依存から抜け出せる人は、3人に1人と言われています。



何故このような結果になるのかというと、
我慢すること自体は依存症の根本的な解決にならないからです。
依存症は、きっかけ→衝動→行動→報酬→きっかけまたは報酬への渇望→行動→…というループによって作られています。


我慢することで仮に衝動から行動へ移すのを抑えられたとしても、
患者の中にこの依存のループは無傷で存在しているのです。
つまり多少我慢できるようになったとして、その患者が依存症であること自体は何も変わっていないのです。

依存のループがあり続ける限り、根本的に依存症を治すことは出来ず、
それが姿を現しては意志力によって封じ込めることを繰り返さなければならなくなるのです。


フェンスを掴む男性


一方RAINは我慢というものに頼ることがありません。
言い換えれば我慢せずに依存症を治す方法なのです。


RAINは自分の依存行動に対してマインドフルになることによって、
自らの依存ループを客観的に理解することを通して、
依存ループそのものを壊す治療法です。

特に行動と報酬の関係性にメスを入れ、
依存対象である行動から自分の望む報酬を得られないことを事実として明らかにします。


だから治療の過程でも意志力には頼らないし、一度成功すればその後も衝動に襲われるたびに我慢するのに多大な意志力を消費すると言った心配もないのです。



著者が行った禁煙プログラムの臨床実験に参加した患者の中には、
マインドフルネスのプログラムの中で自分が実は煙草から何もメリット(報酬)を得ていない事に気付いた人や
実は煙草の味が大嫌いであることに気付いた人もおり、
それによって「吸いたくなっても吸わなくなった」のです。

これこそ、行動と報酬の関係性が崩れた結果です。
衝動に駆られたとしても、その行動によって望む報酬が得られないならそれを行う理由はないと患者が理解できるのです。


依存のループが成り立たないようにすることが依存症治療の理想的な形であり、
それを実現するための画期的な方法としてマインドフルネスがこれから認知されていくことでしょう。


水面を覗く子供達

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

記事の中ではRAINが依存症治療に対していかに効果的かお話ししましたが、
依存症とまでは言わないような様々な悪習から脱出する方法としては尚更有効だと言えるでしょう。


自分の中に居座って悩ませてくる悪習(悪癖)を本当に治したいなら、
根本から断つことを意識するべきです。

そのためには我慢に頼る方法はおすすめできません。意志力の塊のような人でない限りいずれ限界が来ます。
そうではなく、自分の抱える悪習とそれを実践する時の自分について深く、客観的に理解することが根本的な解決に繋がります。


今回の参考図書


最後に今回のお話にあたって参考にした本を紹介します。

ジャドソン・ブルワー著『あなたの脳は変えられる』

あなたの脳は変えられる 「やめられない! 」の神経ループから抜け出す方法

あなたの脳は変えられる 「やめられない! 」の神経ループから抜け出す方法


私がRAINをはじめマインドフルネスについて知るきっかけになった本です。
この本を読んでいなかったら今頃数々の悪習から脱出する術すら知らずにいたでしょう…。

本著は悪習、悪癖を断ち切る方法を脳科学的な視点から紹介することをテーマとしており、
その画期的な方法としてマインドフルネスを紹介しています。
RAINの実践方法などの詳しい内容や、RAINの臨床実験の詳細、瞑想中の脳の様子を調べた実験など
著者自身による研究を通して明らかになったマインドフルネスの脳科学的な根拠を知ることが出来ます。


著者が外国人の本あるあるで自分語りは若干多めですが、
著者自身が色々な依存症に苦しんだ経験などが書かれているので退屈はしません。
自分や周りの大切な人が治したい癖や習慣があって悩んでいるなら一読の価値ありです。



それでは、また。


YUKISHIBA